鍼灸治療のしくみ
東洋医学では、気血が全身をスムーズに巡っていれば健康な状態、滞りがあると不調が現れると考えられています。この気血の通路を「経絡(けいらく)」といい、身体の内と外を結ぶルートでもあり、病の原因となる邪気の通り道でもあります。
経絡上にあって、身体の中の変化の反応が出やすい部分、気が多く集まる部分を「経穴(けいけつ)」といいます。(一般的にはツボと言われています。)
私たちの皮膚は、湿疹や吹き出物、変色などによって体内の情報を映し出すと同時に体外の環境(湿度や温度)などを感知して脳に伝える役割もあります。
反応点でもあり、治療点でもあるのが経穴(ツボ)で、この経穴を鍼やお灸で刺激することによって身体の中の状態を整えていくのが鍼灸治療です。
人はもともと、自分で身体を治す働きをしています
東洋医学はまだ解明されていないことも多く、気や経絡、経穴も目に見えないので懐疑的なイメージをお持ちの方も多いかもしれません。
しかし、私たちは無意識のうちにツボを使っていることがあります。
例えば、目が疲れた時に押さえる目頭の部分(晴明や攅竹)、肩が凝ったときに押さえる部分(肩井)など。これらは眼精疲労や肩こりのツボとして治療でよく使います。
寒い時に背中の上のほうにカイロを貼る人もいます。ここには風門というツボがあって、東洋医学では風門から邪気が入って風邪をひくといわれています。カイロを貼って風邪の予防を本能的にしているのです。
人間は本来自分で身体を治す働きを持っています。
その働きを助けるのが鍼灸です。
鍼灸の主な効果
≪血液・リンパ液循環の改善≫
ツボや筋肉に鍼やお灸で刺激すると、血液やリンパ液の流れが良くなります。
鍼は組織に傷をつけて体内に入ります。
お灸をすると熱感を感じ、やけどのような状態になります。
すると身体は「組織が傷ついた」「異物が入ってきた」と認識し、傷を修復するため、異物を排除するために血液が集まってきます。
これは私たちの身体に備わっている「自然治癒力」「自己免疫力」を利用しています。
≪痛みの緩和≫
鍼の刺激は、痛みを伝わりにくくしたり、痛みに抑制をかけるので、痛みを和らげることができます。
おなかが痛い時や身体をどこかにぶつけた時に手で押さえたり、さすったりすると痛みが和らぐ、という経験ありますよね。これは私たちが本能的にやっていることですが、痛みを感じている時に他の刺激を入れると、痛みよりも刺激のほうが脳に届くので痛みが伝わりにくくなるという身体のメカニズムです。 鍼の刺激で同じように痛みを伝わりにくくしているのです。
また、鍼の刺激で鎮痛作用のあるモルヒネと同じような物質が分泌される、血流が良くなることで発痛物質を含む老廃物が排出されるなど、いくつかの作用により痛みが緩和されます。
≪自律神経の調整≫
鍼には交感神経の緊張をゆるめ、副交感神経の働きを高める作用があります。ストレスフルで交感神経が優位の状態が続くと、身体にも力が入り首や肩、背中の筋肉も硬くなってしまいます。
背骨に沿って交感神経が通っているので、脊柱起立筋が硬くなると交感神経の緊張も強くなります。
首の上の方には、神経や血管が集中しているので首の筋肉が硬くなる神経や血管を圧迫して、副交感神経の働きを低下させてしまいます。首や肩、腰を緩めると自律神経のアンバランスが改善されます。
≪内臓を整える≫
人間の脳はすべてのことに指令を出すわけではありません。日常の多くのことが反射で処理されています。熱いものに触ったとき手を引っ込める、すっぱいものを見ると唾液が出る、などは脳の指令ではなく反射で起こっていることです。
自律神経反射というものもあり、生理の時に腰やお腹が張って痛む(内臓―体性反射)とか、肩こりがひどくて吐き気がする(体性―内臓反射)などで、内臓の不調が体表に、また体表の不調が内臓に影響しています。
鍼灸では、このうちの体性―内臓反射を利用して自律神経の働きを整え、内臓に作用していきます。例えば、胃腸の働きが悪い時は背中が硬くなり、背中が硬くなると胃腸の働きも悪くなります。鍼やお灸で背中をゆるめると胃腸の働きも良くなります。
体表への鍼やお灸の刺激は内臓や自律神経に働きかけることができるのです。
≪健康=キレイ≫
人間の身体を構成する細胞は60兆個とか37兆個とか言われています。以前は60兆個といわれていましたが、2013年に37兆個であるという論文が発表になりました。どちらが正しいのかはわかりませんが、どちらにしても膨大な数です。
また、毎日膨大な数の細胞がどこかで死んだり生まれたりして、細胞の入れ替わりが起こっています。
私たちが呼吸をするように、細胞の中でも呼吸が行われ細胞内に酸素を取り込みます。この酸素を使ってミトコンドリアがエネルギーを作り細胞の活動が行われるのです。
酸素が十分にある細胞が作り出す新しい細胞と、酸素が足りてない細胞が作る新しい細胞では、どちらが良い状態の細胞になるか、想像できますよね。
新しい細胞を作る時にはDNAのコピーが行われますが、酸素足らない状態ではDNAのコピーミスが起こると考えられますし、ミトコンドリアの数も機能も低下しているかもしれません。
細胞が正しく働くためには酸素が十分に必要なのです。
酸素は血液によって全身に運ばれますので、血液の滞りがある身体では、細胞の活動が低下し不調が現れます。
これはお肌も同じです。首や肩のコリがあると、脳やお顔に届く血液量が十分でなく、うまくターンオーバー(お肌の生まれ変わり)ができなかったり、潤いやハリが不足したり。頭がボーっとしたり疲れやすくなったり、ホルモンバランスが乱れたり。
身体の表面に現れている不調を改善することは、身体の内面を整えることに繋がります。
健康であることはキレイにつながっているのです。
おとな女性のための「美と健康」をテーマとした、anneの鍼灸治療をぜひ一度お試しください。